2013年8月28日(水)

地表面観測データの機上即時処理・地上伝送
~高分解能航空機搭載映像レーダ(Pi-SAR2)で桜島を緊急観測~

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」という。)電磁波計測研究所は、噴煙や雲の影響を受けることなく地表面を観測することができる、高分解能航空機搭載映像レーダ(略称:Pi-SAR2)観測データの高速機上処理技術の開発を進めてきました。このたび、平成25年8月18日に発生した桜島昭和火口での爆発的噴火に伴い、桜島周辺の緊急観測を8月20日に実施しました。今回の観測により、これまで観測後1日程度要していた偏波疑似カラー画像の提供時間を10分程度まで大幅短縮可能であることを実証しました。なお、今回の地上に伝送された画像データの解析からは、火砕流が発生したとされる領域において、本年1月観測時からの顕著な変化は認められませんでした。

【高速機上処理技術】

CPUと比べて10倍以上高速なGPUを利用した画像化処理技術を導入することにより、機上での偏波疑似カラー画像生成を実現しました。画像化処理時間は、2 km四方の偏波疑似カラー画像で5分弱程度です。図1に高速機上処理装置を用いた画像化処理と地上伝送の概略図を示します。観測と観測の合間の短時間に記録部から必要な数値データのみ切り出し、高速機上処理装置で画像化処理を行います。生成された画像を縮小した後、通信速度最大332 kbpsの商用通信衛星経由で地上に伝送します。

図1. 高速機上処理装置を用いた画像化処理と地上伝送の概略図

図1. 高速機上処理装置を用いた画像化処理と地上伝送の概略図

【観測概要】

NICT電磁波計測研究所が開発したPi-SAR2は、Xバンド帯の電波を利用することにより噴煙の有無、天候、昼夜等に関係なく地表面を映像化することができます。また、Pi-SAR2は合成開口処理により、世界最高レベルの空間分解能(30 cm)を実現しています。このような特徴を生かして、爆発的噴火の2日後(8月20日)に噴煙が立ち上る昭和火口とその周辺の地表面を上空約9,000 mから観測しました。観測は、8月20日13時から約1時間半の間に様々な方角から複数回実施しています。図2左に航空機内からデジタルカメラで撮影した桜島、図2右に15時過ぎに地上へ伝送した火口付近の観測画像を示します。左のデジタルカメラ画像では噴煙、あるいは雲により視認できません。一方、伝送用に画像サイズを1/4まで縮小したため画質は劣化していますが、右のPi-SAR2の観測画像では観測電波が雲や噴煙を透過するため、それらに影響されず地表面がくっきり観測できている様子が見て取れます。地上に伝送された画像は、直ちに気象庁を通じて火山噴火予知連絡会等関係機関に提供されました。

写真:航空機内からデジタルカメラで撮影した桜島

航空機内からデジタルカメラで撮影した桜島

写真:Pi-SAR2で観測した桜島

Pi-SAR2で観測した桜島

図2. デジタルカメラ画像(左)とPi-SAR2観測画像(右)との比較

【過去データとの比較】

図3の左は図2と異なる角度で観測した今回の画像を示しています。右は左側2枚とほぼ同じ条件で過去(本年1月11日)に観測された画像です。枠線は今回の噴火に伴い小規模な火砕流が発生したとされる南東領域を示しています。急峻に高度が変化する領域では若干の観測飛行経路の違いで見かけが大幅に変化してしまうため、画像データからのみでは噴火前後の詳細な比較は難しいですが、火砕流が発生したとされる領域において、今回の観測からは顕著な変化は認められませんでした。なお、今回の観測では、2 m以下の精度で地表面の高度情報を得ることができるクロストラックインタフェロメトリ観測を同時に実施しました。今後は、持ち帰った観測生データから地表面の高度抽出を試み、過去の高度解析結果と比較する等して8月18日発生の爆発的噴火に伴う火口や火砕流の影響について解析を進める予定です。

図3. 今回の観測画像(左)と本年1月11日の観測画像(右)との比較

【今後の展望】

高速機上処理装置の開発により、これまで東日本大震災観測時には成し得なかった機上での偏波疑似カラー画像の作成とカラー画像データ配信時間の大幅な短縮を実証できました。今後は、①機上処理装置の更なる高速化と高機能化(配信用情報を付加したHTML出力機能付加等)の検討に加え、②高精細/広範囲の処理画像伝送実現に向けたより大容量な通信手段の導入の検討を予定しています。